ブリッジレポート
(2146:JASDAQ) UTホールディングス 企業HP
若山 陽一 社長
若山 陽一 社長

【ブリッジレポート vol.3】2011年3月期上期業績レポート
取材概要「同社への投資を躊躇する理由は、過去の事業戦略の失敗のトラウマ、派遣法改正の影響、及び製造業の海外移転の影響、の3点に集約されるのではない・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年11月30日掲載
企業基本情報
企業名
UTホールディングス株式会社
社長
若山 陽一
所在地
東京都品川区東五反田1-11-15 電波ビル
事業内容
半導体向けの製造派遣・請負が中核、製造装置販売からライン移設業務に転換。設計開発事業も
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 18,056 290 182 -1,401
2009年3月 40,694 1,793 603 -10,861
2008年3月 51,787 4,200 3,473 1,203
株式情報(11/16現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
32,600円 212,545株 6,929百万円 - 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,400.00円 7.4% 6,492.74円 5.0倍 11,669.12円 2.8倍
※株価は11/16終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
UTホールディングスの2011年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
国内外の半導体・FPDメーカー等に対して、構内作業(工場内作業)の請負サービスを提供する「アウトソーシング事業」とデバイス設計(デザイン)サービスを提供する「設計開発事業」を柱とし、それらサービスを一括して提供するワンストップ型トータルソリューションサービスを展開している。
 
<事業内容>
事業はアウトソーシング事業と設計開発事業に分かれ、売上構成比は、前者が95.3%、後者が4.7%(10/3期)。
 
アウトソーシング事業
半導体・液晶・太陽電池・二次電池など高度な分野に専門特化した製造請負事業を展開。各工程の製造オペレーションから、装置メンテナンスや保全業務の一括受託まで行い、各工程の生産能力を把握し、それに基づいた作業改善を提案するなど付加価値の高いサービスが特徴。パナソニック、ソニー、ローム、東芝等の大手半導体メーカーを主要顧客としており、日本エイム(株)と(株)ファインステージがサービスを提供している。
 
稼働数と営業利益の推移
 
設計開発事業
半導体デバイスの設計・デザイン請負や設計エンジニアの派遣の他、組込みソフトウェアの受託開発を行っている。半導体・液晶生産に関する幅広い経験とノウハウを活かして、製造プロセス及びそのコストを視野に入れた設計が高い評価を得ている。国内半導体メーカーを主要顧客とし、(株)アルティスタがサービスを提供している。
 
<IR宣言>
同社は、IR活動を経営の重要項目の一つとして位置付けて取り組んできたが、現在の同社の状況、具体的には、業績の回復と財務の健全化が、株主や投資家に十分に理解されていないと感じている。このため、過去における事業の低迷期の反省も踏まえ、IR活動を経営の最重要課題として改めて位置付け、「IR宣言」として定める事とした。
また、「IR宣言」を公表する事により、パブリック企業としての説明責任を果たし、常に明瞭な企業メッセージを発信する事で株主や投資家との長期的な信頼関係を構築し、企業価値の最大化を図りたいとも考えている。
 
 
IR活動目標
 
企業の認知度向上に努め、事業内容の理解促進に注力します。
・個人投資家向け説明会を年4 回以上開催
・アナリスト・機関投資家向け決算説明会を年4回開催
・個人投資家向け説明会、アナリスト・機関投資家向け決算説明会で使用したIR資料や質疑応答の内容については、可能な限りウェブサイトに公開
 
企業理念ならびに経営戦略を情熱を持ってお伝えいたします。
・説明会については、すべて代表取締役社長の若山陽一が直接説明し、すべての質問に回答
・アナリスト・機関投資家との個別取材については、すべての取材依頼に対応
・会社説明会や決算説明会で使用するIR資料の改革に取り組む
 
中期経営計画に則った適正株価の形成を目指します。
・中期経営計画を策定し、経営の方向性を明示するとともに明確な業績目標を掲げる
・新中期経営計画は、2011年3月期の決算発表までに業績目標・適正株価の考え方を含めて発表予定
・新中期経営計画を着実に達成する過程において、適正株価の形成を目指す
 
中長期のステークホルダーを増やし、株主満足度の向上に邁進します。
・株主・投資家の皆さまの声を経営にダイレクトにフィードバック
・株主総会を土日に開催
・対前期比のEPS成長率30%以上、配当性向30%以上をコミット
 
 
2011年3月期上期決算
 
 
請負化によるシェア・アップでアウトソーシング事業が拡大
売上高は前年同期比23.2%増の98.7億円。請負化によるシェア・アップに加え、顧客企業の生産の回復もあり、主力のアウトソーシング事業において半導体・同製造装置メーカーやフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)関連メーカーから受注が増加した他、太陽電池等で新規顧客開拓も進展。上期末の技術職社員の稼動数が4,631人と前年同期末比34.1%増加した(前年同期末3,453人、期初予想4,135人)。利益面では、技術職社員稼動数の増加に加え、製造装置事業を手掛けていたエイペックスが連結対象外となった事等で売上総利益率が改善する一方、販管費が減少。前年同期は1.4億円にとどまった営業利益が8.8億円に拡大した。有利子負債の削減が進み金融収支も大幅に改善し、経常利益は7.7億円。四半期純利益は特別損益の正常化や税効果会計の影響で同68.5%減少したものの、5.4億円を確保した。尚、前年同期は、のれん償却額44.4億円など特別損失54.1億円を計上する一方、貸倒引当金戻入額10.1億円や社債消却益51.0億円など特別利益61.8億円を計上した。
 
 
上期末の稼動数は4,631人で、期末までに5,500人体制の構築を目指している(過去のピークはリーマン・ショック前の5,847人)。既に5,200人体制までは目処が付いており、営業努力により期末までに300人の上積みを図りたい考え(10/3期第3四半期以降、四半期で300人増のペースが続いている)。ちなみに、5,200人体制の下では、20億円程度の月商が見込まれ、売上総利益率20%と仮定して4億円の売上総利益が確保できる見込み。月次の販管費が1.7億円〜1.8億円で推移しているため、2.2億円〜2.3億円の営業利益が確保できる計算だ。5,500人体制になると、月次の営業利益は2.5億円程度に増加する。また、リーマン・ショック後に原価改善や管理効率の向上を目的に集約を進めた取引先工場数も、前下期から取り組んでいる新規営業活動強化の成果が現れてきた8月以降増加に転じている。
 
 
尚、半導体関連への過度の依存によるリスクを回避するべく、非半導体分野の強化にも取り組んでおり、この上期は、太陽電池、2次電池、LED、及びディスプレイの成長4分野の売上構成比が13.3%を占めるに至った(半導体67.8%、電子部品13.3%、その他5.6%)。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比5.7億円減の93.1億円。有利子負債の削減を進めた事が総資産減少の主な要因で、財務の健全化が一段と進み、上期末の自己資本比率は26.6%と同2.1ポイント改善した。CFの面では、受注・売上の増加に伴い運転資金が増加したものの、グループの再編に伴う資金の流出(連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出)が無くなり投資CFのマイナス幅が縮小したため、前年同期は0.3億円にとどまったフリーCFが6.9億円に増加した。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
前期比1.6%の増収、16.7億円の営業利益予想(前期は2.9億円の利益)
今期より連結対象外となったエイペックスが手掛けていた製造装置事業を除いた実質ベースでは、前期比14.1%の増収、同26.7%の営業増益。主力のアウトソーシング事業において、季節要因もあり下期は主要顧客の生産が上期を下回る見込みだが、シェア・アップと取引先工場数の増加を背景に稼動数の増加が続く。増収効果に加え、オペレーションの効率化とエイペックスが連結対象外となった事による販管費の減少等で営業利益率の改善が進む見込み。配当は1株当たり100円増配の2,400円を予定している。
 
 
通期予想に対する進捗率は、アウトソーシング事業が売上高54.9%、営業利益57.0%。設計開発事業が売上高52.4%、営業利益95.3%。
 
(2)事業展開上のリスク要因と考え方
’標法改正の影響
専門性と請負実績を強みに請負化を軸としたシェア・アップを推進していく考え。同社においては、既に全ての契約が請負契約となっているため派遣法改正のリスクは無い。逆に、依然として派遣を利用している企業が多い事から、これを請負拡大のチャンスと考えている。尚、製造業でも、外部労働力の比率が低い(1工場当たり10%程度)自動車メーカーは派遣を直接雇用に切り替えるケースが多いようだが、同社がターゲットとする電機メーカーは同40%程度(アッセンブリーメーカーの場合、80%程度になるケースもある)と高いため、直接雇用に切り替えるのは現実的ではなく、業務委託(同社にとって請負)へシフトする事で派遣法改正への対応を図るものと思われる。
また、同社の取引先は1工場当たり平均3ラインを有し6社の派遣会社を利用しているが、業務委託(請負)にシフトすると、通常1ラインに付き委託会社1社の体制に移行する。このため、派遣から業務委託へシフトするニーズを取り込む事ができれば、既存顧客内でのシェア・アップを図る事ができる。また、委託先の選定に当たっては、過去の請負実績や現状のシェアが大きい企業を中心に集約が進められるため同社が勝ち残る可能性は高い。同社はこれまで顧客数を絞り込んで高いインハウスシェアを実現する事で業界でも例の無い高収益を実現してきたが、今後は高いインハウスシェアを維持すると共に、現在も派遣を利用している企業を中心に顧客数を拡大していく考え。
 
 
円高の進展と製造業の海外移転
インハウスソリューションサービスの提供により、事業の拡大を図ると共に製造業の国内雇用維持を支援していく考え。厳しい事業環境の中でも国内の雇用維持を責務と考えている企業は多く、雇用維持につながるコストダウンサービスに対するニーズは強い。実際、同社が既にインハウスソリューションサービスを提供している半導体工場では第1四半期だけで17件もの工場見学を受けた(第2四半期もほぼ同数の工場見学があった模様)。また、11年1月から100人規模の転籍を伴う新規案件が立ち上がる予定。
尚、インハウスソリューションサービスとは、顧客従業員を受け入れて製造業務を一括して請負うサービスの事。同社は前期に業界で初となるインハウスソリューションを受注し業務を開始している。
 
 
(3)新たなビジョンと成長戦略の策定
現在、新中期経営計画の策定に取り組んでおり、詳細を11/3期決算発表までに発表する予定である。 新中期経営計画の策定に当たっての基本的な考え方は次の通り。
 
製造派遣・請負市場の市場規模
製造派遣・請負業会の市場規模は1兆4,600億円、就労人口は40万人〜50万人(2010年3月期)と推計されている。この中で同社がターゲットとしているエレクトロニクス分野は全体の約40%で、市場規模が約5,800億円、就労人口20万人と言われている。
製造派遣・請負市場の課題について
製造業派遣・請負における主たる就労者は「地方の若年労働者」である。逆に言えば、製造業派遣・請負業界が「地方の若年労働者」の雇用の受け皿となっており、「この雇用を支える事が製造派遣・請負業界の使命の一つである」と言うのが同社の考え。規制緩和の波に乗り急激に拡大してきた製造派遣・請負業界が「雇用の安定」や「キャリアアップ機会の拡大」の取り組みを重視しなかった事がリーマン・ショックのような大きな景気後退局面で、ひずみを露呈したと自戒の念を持っている。
製造派遣・請負業界が取り組むべき課題
製造派遣・請負業界は、リーマン・ショック以降、規模が縮小したとはいえ、現在でも1兆4,600億円の市場規模と40万人〜50万人の就労者を抱える。製造派遣・請負業界で働く数多くの人たちのキャリアアップの機会を創出し、雇用の安定を図る事が業界に対する社会の要請であり、これに応える事が製造派遣・請負業界の健全な発展に不可欠な要件であると認識している。
 
新中期経営計画でチャレンジする考え方
同社は創業から16年の間、一貫して「常用雇用」、「請負サービス」を基盤として事業を展開。業界では後発ではあるが、半導体業界にフォーカスして、すべての社員を評価し・教育し、業務を一括して受託してイキイキとした職場づくりに取り組む事で半導体分野の中でNo.1の実績を作り上げてきた。
今回策定される新中期経営計画においては、これまでに培ってきたノウハウを製造業全般に広げ、「“半導体請負No.1”から“質・量ともに日本一の請負会社”へ」をテーマに、製造派遣・請負業界で抱える課題解決に取り組んでいく考え。尚、「質」とは、すべての社員を評価・教育し、安定した雇用の中で、イキイキとした職場を作り上げるという事。また、「量」とは、中長期的に20,000人の良質な雇用を創出する事である。
 
 
取材を終えて
同社への投資を躊躇する理由は、過去の事業戦略の失敗のトラウマ、派遣法改正の影響、及び製造業の海外移転の影響、の3点に集約されるのではないだろうか。しかし、過去の事業戦略の失敗については、稼動数の増加を背景とした上期の業績や健全な財務内容に示されているように、言うまでもなく、過去のものであり懸念材料は一掃されている。また、「常用雇用」、「請負サービス」を事業基盤とする同社にとって、派遣法改正はむしろビジネスチャンスである。更に製造業の海外移転にしても、上期決算発表の席上で日本電産や日産自動車が国内生産と国内雇用の維持に改めて意欲とこだわりを示したが、これは多くの日本メーカーに共通した経営理念である。なぜなら国内生産こそが、「モノづくり日本」の原点だからである。そして、「モノづくり日本」を陰で支えているのが同社である。
「IR宣言」と共に発表された「IR活動目標」で示された「EPS成長率30%以上」を前提とすれば、PER18〜21倍の評価は可能であり、現在、予想PER 5倍の水準にある株価は全く実態を反映していない。日本メーカーを苦しめてきた急激な円高もピークアウトした感があり、今後の国内製造業の復活や株式市場の回復に期待が高まる。外部環境の改善につれて、優れた経営理念と経営戦略により「日本のモノづくり」と「雇用」を陰で支える同社に対する評価も変わっていくものと考える。尚、現在の配当利回りは7%を超える。このため、キャピタルゲイン期待にとどまらず、インカムゲインに期待した保有でも充分過ぎるほどのリターンを得る事ができる。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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