ブリッジレポート
(2437) Shinwa Wise Holdings株式会社

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ブリッジレポート:(2437)シンワアートオークション vol.5

(2437:大証ヘラクレス) シンワアートオークション 企業HP
倉田 陽一郎 社長
倉田 陽一郎 社長
企業基本情報
企業名
シンワアートオークション株式会社
社長
倉田 陽一郎
所在地
東京都中央区銀座 7-4-12
決算期
5月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2006年5月 2,334 562 567 311
2005年5月 1,940 440 410 235
2004年5月 1,680 319 311 174
2003年5月 1,222 234 231 122
2002年5月 1,158 139 129 70
2001年5月 1,105 200 202 38
2000年5月 1,302 218 201 109
株式情報(10/11現在データ)
株価 時価総額 発行済株式数 単元株数
264,000円 15,268百万円 57,834株
シンワアートオークションの2007年5月期第1四半期業績について、会社概要と共にブリッジレポートにてご報告いたします。
 
会社概要
 
「公明正大且つ信用あるオークション市場の創造と拡大」を企業理念として掲げ、美術品を中心としたオークションの企画、運営を中心に事業展開を進めています。

世界のオークション市場の規模は約7,600億円と推定されています。これに対して日本の市場規模は約170億円と、世界市場の2%の規模に過ぎません。日本の美術品市場において、オークション取引の認知度は高まりつつありますが、同社では「日本の経済規模を考えれば、今後の市場拡大余地は極めて大きいと」と考えています。
 
<事業内容>
事業は、主力のオークション事業と絵画等の美術品の直接取引を希望する顧客間のマッチングを行うプライベートセール等のその他事業に分かれます。
オークション落札価額(注.1)又はプライベートセールの際の取引価格に対する手数料収入(注.2)、及びオークションの出品者から徴収するカタログ掲載料やオークション参加者に対するカタログ販売が主要な収入源となっています。ただ、営業戦略上、同社が一旦買取り、在庫商品としてオークションに出品する場合があります。この場合は、オークション落札価額が売上高として計上されます。
 
(注.1)オークション落札価格の意味合い
出品者にとっては、一般のコレクター(最終消費者)が参加して競るため、一般買取価格より高く換金できます。一方、落札者にとっては、流通の利ざやがないため、公開の場で価値感を共有する参加者との間で価格を決定する満足感が得られます。つまり、オークションを通すことにより、出品者は高く売ることができる一方、落札者は納得のいく価格で買うことができます。
 
(注.2)
手数料収入は、落札手数料と出品手数料に分かれ、それぞれ下記の料率で徴収されます。
落札手数料:100万円まで15.75%(税込)100万円を超える部分10.50%(税込)
出品手数料:10.50%(税込)
 
<オークションの種類と取扱高の推移>
同社が開催するオークションは、次のように区分されています。
 
 
過去4期間、主力の近代美術オークションを中心に取扱高は順調に拡大しています。
 
 
<財務基本方針>
 
<国内美術品オークション市場の推移>
認知度の高まりなどを背景に国内美術品オークション市場は拡大傾向にあります。ただ、世界のオークション市場の規模約7600億円に対して、日本の市場規模は約170億円。世界市場の2%に過ぎません。同社では「日本の経済規模を考えれば、市場の拡大余地は極めて大きい」と考えています。
 
 
<シンワアートオークション 近代美術インデックス -デフレのトラウマ->
 
上のグラフから、平均落札単価が下げ止まり、緩やかな上昇トレンドを描いていることがわかります。美術品市場における同社オークションの認知の高まりが、価値の安定化と、より高額な美術品の出品をもたらしています。ただ、価格は未だピーク時の20分の1程度です。
 
※シンワアートオークション 近代美術インデックスとは、同社近代美術オークションの1点あたりの平均落札単価を開催毎に算出し、直近3回分の平均値を算出、1990年9月近代美術オークションを10,000としてインデックス化したもの。
 
<市場シェア>
国内美術品オークション市場において、同社は圧倒的な市場シェアを有しています。
 
 
社名の横の金額は平均落札単価です。平均落札単価の違いから同社の経営理念に基づいた組織的営業力が大きな優位性を発揮していることも読み取ることができます。
 
2007年5月期第1四半期業績
 
<非連結>
 
各項目で前年同期の実績を下回りましたが、これは前年同期に上場記念オークションを開催しており、その出来高が約14億5干万円あったためです。当第1四半期は例年通りのオークションスケジュールに戻り、業績はそれに準じたものとなりました。
 
また、取扱高が計画値を下回りましたが、これは8月に見込んでいたプライベートセールの成約が9月にずれ込んだためです。
 
尚、第1四半期はサマーバケーションの季節であり、富裕層を対象にした同社のビジネスは閑散期にあたります。このため、プライベートセール等の成約時期が読みにくい上、通期業績に対する進捗率も低くなりがちです。第1四半期の進捗率は、あまり重要ではありません。
 
<売上総利益率の推移>
 
売上総利益は計画を超過しました。
 
<販売費及び一般管理費>
 
マーケティングに優れた人材獲得に務めており、今期は5名の採用を予定しています。
 
<部門別取扱高>
 
プライベートセールの取扱高が計画を下回りましたが、これは成約が第2四半期にずれ込んだためです。既に説明した通り、この時期(サマーバケーションの時期)のプライベートセールは、特に見通しが難しい(成約時期が振れやすい)のが現状です。
 
<貸借対照表>
 
第1四半期期末近くにオークションが無かったため、売上債権が減少、オークション未払金の残高もありません。一方、デフレの終焉に対応した商品戦略の一環として、棚卸資産が増加しました。固定負債とは退職給付金であり、全額を定期預金で保全しています。第1四半期期末の株主資本比率は91.9%となりました。
 
<キャッシュ・フロー>
 
営業活動によるキャッシュ・フローは、6億82百万円の支出となりました。これは主に、オークション未払金の減少、前渡金・たな卸資産の増加及び法人税の納付によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、18百万円の支出となりました。これは余剰資金の定期預金への預入れと社有車(美術品を運ぶための特別仕様車)の入替購入によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1億44百万円の支出となりました。これは配当金の支払いによるものです。
 
<第1四半期の落札実績>
満谷国四郎 「裸婦」
 
落札予想価格 200万円~300万円
落札価額 480万円
2006年7月開催 近代美術オークション
 
浅井忠 「川辺」
 
落札予想価格 250万円~350万円
落札価額 500万円
2006年7月開催 近代美術オークション
 
3 作者不詳 「Portrait of the Comtesse Mirandade del Castanar」
 
1,950万円
落札予想価格 100万円~300万円
落札価額
2006年6月開催 近代美術PartⅡオークション
 
ダイアモンドリング
 
落札予想価格 600万円~850万円
落札価額 620万円
2006年7月開催 JEWELLERY&WATCHESオークション
 
荻須高徳 「L’Hotel àPorte de Plaisance, Paris」
落札予想価格 2,300万円~3,300万円
落札価額 3,000万円
2006年7月開催 近代美術オークション
 
横山大観 「春嶺」
落札予想価格 4,000万円~6,000万円
落札価額 4,200万円
2006年7月開催 近代美術オークション
 
富本憲吉 「色繒岩大飾皿」
落札予想価格 1,200万円~1,800万円
落札価額 1,850万円
 
2006年6月開催 近代陶芸オークション
 
2007年5月期業績予想
 
<非連結>
 
通期予想に変更はありません。
ここ3年ほど高い成長が続きましたが、2007年5月期は巡航速度に抑え、来期以降の成長に向けて足下を固めます。キーワードは、「飛躍・柔軟・遵守」。デフレが終息、日本経済は大きな変化の時を迎えようとしています。デフレからインフレへ、経済動向を睨み柔軟な思考で経営に当たる考えです。
 
<2007年5月期 通期計画のポイント>
1.日本美術再評価の一歩
美術品業者間取引において価格が上昇しているほか、1次流通市場への海外ファンドなどの投機的資金の流入も見られます。同社の近代美術オークション平均落札価額も上昇しており、デフレの終焉と共に日本美術再評価に向けた動きが感じられます。
 
2.JEWELLERY&WATCHESオークションの拡張
こうした中で、同社はオークションの裾野の拡大に向けてJEWELLERY&WATCHESオークションの拡張を図ります。同オークションの前2006年5月期取扱高実績は4億68百万円ですが、今2007年5月期は10億60百万円を予想しています。
 
3.コンテンポラリーアートオークション稼動
また、若手芸術家の育成も視野に入れたコンテンポラリーアートオークションの育成にも取り組みます。同オークションは、前期の第1回コンテンポラリーアートオークションに続く第2弾が12月に予定されています。
 
<近代美術オークション-日本美術再評価への準備->
オークション落札価額は1999年に底を打ったものの、美術品単価そのものは2003年まで下落が続きました。また、底打ちしたとは言え、価格上昇は一部の作家の作品についてのみ言えることで、日本美術全体の再評価には至っていません。 言い換えれば、現在は既存の富裕層コレクターによって、20世紀を代表する近代美術家の作品が評価されている状態です。「今後、新しいコレクターやアートファンドの登場により、現存の有力作家によるコンテンポラリーアート等が評価されて行くことで美術品市場全体が再評価されていく」と同社では考えています。
 
 
<コンテンポラリーアートオークション>
コンテンポラリーアートオークションは、近代美術オークションの継続的開催により定着しつつある透明で安定的な美術品市場を土台として、新しい市場の開発に取り組むものです。「日本の作家を世界へ」、「世界に誇る日本の文化を、世界に発信」といった観点から、現存作家の紹介やオークションによる価値付け等、将来の換金市場に耐えられる天才作家群の紹介などを行う考えであり、近代美術とは異なるビジネスモデルで運営していくことになります。
 
新たな市場の開発(近代美術とは異なる事業モデル)
 
 
<西洋美術・宝石・時計・ワイン>
オークション参加層の多様化に向けて、西洋美術、宝石、時計、ワイン等のオークションを強化します。
 
 
<2007年5月期商品戦略の転換>
1.1年ルールを厳守
2.受動的在庫→能動的在庫ヘ
・デフレ転換に伴い、多様な換金需要に即時対応できる体制を確立
・購入することによって得られる事業チャンスを取りこぼさない
3.各部門で在庫の最大水準を予算化
・全体で3億5千万円(うち近代美術2億円)
※予算を上回る可能性のある大きな購入案件は、経営会議で慎重な検討を行い、リスクがコントロールされた上で収益の可能性が高い案件に関して個別で承認し、購入。 4.能動的在庫に関しては、取得1年以内のオークションもしくはプライべートセールで売却。
 
購入することによって得られる事業チャンスを取りこぼさないために、1年ルール(取得1年以内の売却)の厳守を前提に積極的に在庫に対応します。このため、各部門で在庫の最大水準を予算化しました。具体的には、全体で3億5千万円、うち近代美術で2億円です。
 
<前提条件>
1.取扱高
 
2.売上高
・25億55百万円(内商品売上高6億67百万円)
 
3.販売費及び一般管理費
・12億07百万円(広告宣伝費及び業務提携に係る費用が増加します)
 
4.今期の新たな取組み
JEWELLERY&WATCHES・コンテンポラリーアート、及び買取り案件を強化します。
業務提携による販路拡大に取り組みます(例:ソネット・エムスリー、フィデックとの業務提携)
 
<四半期毎の見通し>
 
期初発表の見通しに変更はありません。第1四半期は予想の範囲内です。また、前年同期比では、3Q(第3四半期)までは、経常利益が前年同期の実績を下回る見込みです。
 
<2006年10月以降のオークションスケジュール>
10月21日(土) 西洋美術
11月11日(土) 近代美術
11月18日(土) 近代美術PartⅡ
12月 2日(土) ワイン
12月 2日(土) コンテンポラリーアート
12月 9日(土) 近代陶芸
12月16日(土) JEWELLRY&WATCHES
12月16日(土) 近代美術PartⅡ
 
※オークションスケジュールは変更となる場合があります。
 
取材を終えて
幅な減収・減益となったため驚かれた方も多いかと思いますが、説明したように予想の範囲内です。
ちなみに、同社の予算(業績予想)は、次のように手順を踏んだ上で立てられます。
オークションスケジュールの決定 → 営業部門が案件の進捗状況から取扱高を予測 → 年間取扱高目標額の算出 → 売上高・経常利益・当期純利益の算出。
つまり、業績予想のベースとなるのは、オークションスケジュールです。そして、同社の傾向として取扱高の予測、目標額及び売上・利益の算出は保守的です。このため、オークションが予定通りに開催されている限り、業績予想に対して実績が大きく下振れする可能性は低いと考えていいと思います。
ただ、金額の大きな作品の出展が次ぎのオークションにずれ込むことがあるそうですから、可能性がゼロというわけではありません。